今回は、望月安迪さん著の『シン・ロジカルシンキング』を紹介していきます!
皆さんには、アイデアや意見を出しても、上司や周りから、「そんなことは皆んな知っているよ」と一蹴されてしまったという経験や、価値のあるアイデアが生み出せないと悩んでいないでしょうか?
本書は、そういった方に役立つ1冊です!
本書の著者である望月さんは、デトロイトトーマツで、上位数%の人材に限られる最高評価を4年連続で獲得した、最強の戦略コンサルタントです。
本書では、そんな著者によって、本当の価値のあるアウトプットを生み出すための、従来のロジカルシンキングを超えた、シン・ロジカルシンキングについて解説されています。
この記事では、その本書の中から、ロジカル・シンキングは時代遅れ、シン・ロジカルシンキングの型の2つについて紹介していきます!
シン・ロジカルシンキングの要約
ロジカル・シンキングは時代遅れ
ロジカル・シンキングは、ビジネスマンが身につけるべきスキルとして、一時期多くの注目を集めました。
実際に書店に行くと、ロジカル・シンキングについて書かれた本がたくさん並べられていました。
もちろん、今でもロジカル・シンキングを学ぶことによって、合理的で正しい思考をすることはできますし、仕事で役に立つ場面はあると思います。
では、ロジカル・シンキングが時代遅れな理由は何なのか?
その理由を本書から2つ紹介していきます。
まず一つ目が、ロジカルシンキングが、価値を生み出すどころか、アウトプットの価値を減らしてしまっていることです。
考えるという行為は、①インプット(情報収集)②プロセス(情報処理・分析)③アウトプット(思考成果の提示)という流れで構成されています。
このうち、ロジカル・シンキングや、フレームワークは、②プロセス(情報処理・分析)の部分にあたります。
このプロセス次第で、同じインプットをしたとしても、アウトプットが変わってくるわけです。
しかし、考え方のプロセスが昔のままでは、そこから生み出されるアウトプットには目新しさがなく、陳腐なものになってしまいます。
そのため、これまでのロジカル・シンキングをただ使うだけでは、これまでとは変わり映えのないアウトプットしか生み出すことができず、アウトプットの価値を減らしてしまうのです。
続いて2つ目の理由が、従来のロジカルシンキングでは、アウトプットの品質を同質化してしまうことです。
ロジカルシンキングやほかのMECEなどのフレームワークは、ビジネスパーソンが成果を出すための再現性を高めるものとして活用されてきました。
そのため、ロジカルシンキングを活用することで、誰でも同じように、正しく、わかりやすく伝えることができるようになるのです。
しかし、それは一方で、ロジカルシンキングを使って考えると、他と同じようなアウトプットしか生み出せないということにもつながります。
料理も、材料と調理法が全く同じであれば、同じものが出来上がるのと同じように、考え方が同じであれば、アウトプットされるものも同じようなものになるのです。
現代で求められているのは、同じようなアウトプットを大量生産することではなく、独創性や革新性といったものです。
そのような中で、ロジカル・シンキングを使ってアウトプットを生み出すだけでは、「そんなこと誰でも知っているよ」と考えしか生み出すことができなくなってしまいます。
だからこそ、従来のロジカル・シンキングを使うだけでは、今は不十分であり、これからも価値を生み出し続けるためには、考え方をアップデートさせていく必要があるのです。
シン・ロジカルシンキングの型
本書では、従来のロジカル・シンキングをアップデートさせた思考の型として、QADIサイクルが解説されています。
QADIサイクルとは、Question:問い、Abduction:仮説、Deduction:示唆、induction:結論の頭文字をとったものです。
このうち、deduction:示唆は、ロジカルシンキングでいうところも、演繹法、inductionは帰納法にあたります。
まず演繹法とは、アリストテレスが提唱した手法で、三段論法とも呼ばれています。
演繹法の考え方は、次の通りです。
①「前提条件」を論拠・判断基準として持ち、②「個別事象」(具体的なモノ・コト)をそこに当てはめることで、③「意味合い」(示唆)を導き出すこと
簡単な例を挙げると、まず前提条件が、「歩行者は赤信号では止まらなければならない」、そして個別事象が「現在、信号は赤である」とすると、意味合いは「今、歩行者は止まらなければいけない」となります。
この演繹法には、手持ちの情報から、さらなる情報を引き出して、最大限に情報を有効活用することができるという強みがあります。
しかし、一方で、議論の出発点となる前提を形成できない、前提そのものが正しいかどうかの判定ができないという弱みがあります。
例えば、北海道に住む人は、海鮮が好きであるという前提から、職場の北海道出身の先輩は、海鮮が好きであるという結論を導き出すことができます。
しかし、北海道の人は海鮮が好きであるという前提は、どこから出てきたのか、またそれが本当に正しいことなのかを、演繹法自体が教えてくれるわけではありません。
実際に、私の先輩は北海道出身ですが 、海鮮が嫌いで、一切食べません。
そのため、演繹法によって、手持ちの情報をさらに飛躍させることができる一方で、前提が正しいかどうか判断できないという弱みもあるのです。
続いて帰納法とは、個別的・特殊な事例から、一般的・普遍的な規則や法則を見出そうとする方法です。
先ほどの、北海道の人は海鮮が好きであるという前提が妥当かどうかは、北海道の人にインタビューをするなどして、サンプルを集めることで、帰納的に調べることができます。
そのため、帰納法を活用することで、一般的な法則を導けるだけでなく、サンプル収集の段階で誤りに気づくことができます。
そして、演繹法と帰納法を用いてアウトプットを導き出すことで、筋道を追って考えれば、誰でも同じ結論にたどり着くことができるのです。
これは、メリットとなる場面もあるかもしれませんが、現代では多くの場合、他と同じようなアウトプットでは、価値を生み出すことができません。
そこで、シン・ロジカルシンキングでは、演繹法と帰納法に加えて、アブダクション:仮説によって、全くあらたしい仮説の獲得をしていきます。
従来のロジカル・シンキングは、アイデアを枠に当てはめて整理して、一つの方向へまとめていく力を持っていました。
だからこそ、ロジカル・シンキングを使うことで、誰でも同じ質のアウトプットを生み出すことができたのです。
しかし、それでは仮説を出す段階で、視野が狭くなりすぎてしまい、価値のある選択肢を見落としてしまうこともあります。
そのため、アブダクションによって、仮説の幅を広げてあげる必要があるのです。
そこで、アブダクション的思考をする上でキーとなる問いが、「What if?(もし〜だとしたらどうか?)」です。
例えば、自社製品の売り上げが急激に落ちて、その原因を探るとき、「What if?」を問いかけると「顧客のニーズが変わっていたとしたらどうか?」「競合他社がよりいい商品を販売していたとしたらどうか?」「顧客の購入ルートが店頭からオンラインに移っていたとしらどうか?」といったように、どんどんと仮説を出すことができます。
このアブダクションによって、生み出される仮説は、その人がそれまでに蓄積してきたユニークな知識や経験、価値観に根ざしているため、独自性のある仮説を生み出すことができるのです。
マーケティングに精通している人であれば、おそらく、売り上げが急激に落ちた原因を、もっとマーケティングの視点から考えることができると思いますし、営業職であれば、営業からの視点で考えることができると思います。
そのため、アブダクションは、その人の持っているものを使って、ほかの人には生み出せない仮説を出すことができ、それゆえに価値を生むことができるのです。
しかし、このアブダクションにも、考えられた仮説の精度・正しさは、相対的に低いという弱みがあります。
演繹法や帰納法のように、ロジックを積み重ねて答えを出していくものではなく、アブダクションは、最初から答え(仮説)を連想していきます。
そのため、中にはロジックには当てはまらない仮説も出てきてしまうため、精度や正しさが低くなってしまいます。
だからこそ、アブダクションによって生み出された仮説を、演繹的思考によって、仮説から、さらなる情報を引き出したり、帰納的思考によって、事実を基に、仮説に誤りがないかを検証し、結論を導き出していく必要があります。
そして、アブダクション、演繹的思考、帰納的思考の3つの土台となるのが、question:問いです。
問いの質がいいと、仮説の質も良くなり、その後の思考の質を高めることができるのです。
そこで、問いを立てるための基本的な方法が、解決したいことや明らかにしたいことを、「疑問文」で書き出すことです。
とても単純な方法に思えるかもしれませんが、私たちの脳は、疑問文にするだけで、思考が回り始めるようになっているのです。
皆さんも、人から「今日は何曜日ですか?」から聞かれたら、頭の中で、「今日は何曜日だっけ?」と考えると思います。
同じように、仕事の効率が上がらないと嘆いているだけで、頭の中では思考が回りませんが、「仕事の効率が低いのはなぜか?」と疑問文にしてあげるだけで、仕事の効率が低い原因について、考えるようになるのです。
だからこそ、とても単純な方法ですが、問いを立てるためには、まずは疑問文で書き出すことが大切なのです。
そして、問いには良い問いと悪い問いがあります。
本書では、その特徴を3パターン紹介しています。
①良い問い:解像度が高い問い 悪い問い:曖昧な問い
②良い問い:考えることで答えが出せる問い 悪い問い:考えても答えが出ない問い
③良い問い:答えが目的への貢献につながる問い 悪い問い:答えても意味がない問い
『シン・ロジカルシンキング』より
この3つの特徴に当てはまる問いを立てることができれば、そこから良い仮説を立てることができ、質の高い思考をすることができるのです。
このように、Question:問い、Abduction:仮説、Deduction:示唆、induction:結論のサイクルを回していくことで、質の高いアウトプットを生み出すことができます。
本書では、実例を基に、このQADIサイクルの使い方が解説されておりますので、ぜひ参考にしてみてください!
本書では、この記事では紹介しきれていない、シン・ロジカルシンキングの大切なポイントがまだまだ紹介されています。
そのため、質の高いアウトプットが出せるようになる思考法を知りたいという方は、ぜひ本書を読んでみてください!
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ではでは。