保有効果とは、行動経済学で使われる専門用語です。
保有効果は、物が手放せないという日常的な問題から、ビジネスで使われるなど、様々な場面で働いています。
この記事では、保有効果について、実際に行われた実験や実例をもとに紹介していきます!
YouTubeでは、アニメーションを使った動画を挙げています!
動画で「保有効果」について知りたい方は、下からご覧ください!
保有効果とは?
保有効果とは、「一度自分のものになると、高い価値を感じて、手放したくなくなること」です。
保有効果は、ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーによって提唱されていました。
実際に、保有効果を実証した実験があります。
保有効果を実証した実験
この実験は、アメリカのコーネル大学で行われたもので、学生を2つのグループに分けました。
一方のグループに、大学のロゴが入ったマグカップがプレゼントされました。
そして、2つのグループの間で競売をやらせました。
売り手には「いくらの値段なら売ってもいいか」、買い手には「いくらの値段なら買ってもいいか」を書いてもらいました。
その結果、売り手は平均5.25$の値段をつけ、買い手は平均2.75$の値段をつけました。
売り手のつけた値段は、買い手のつけた値段の約2倍になりました。
この実験の結果から、我々は一度自分のものになってしまうと、高い価値を感じでしまうことがわかります。
保有効果が働く理由
なぜ保有効果が働いてしまうのか?
保有効果が働く理由は、主に次の3つが挙げられます。
①損失回避性
②現状維持バイアス
③ザイオンス効果
損失回避性
我々には、損失を回避したいと強く望む傾向があるからだと考えられています。
人間は、何かを得る喜びよりも、今持っているものを失う苦痛の方がより大きく感じる言われています。
これを損失回避性と言います。
損失回避性については、プロスペクト理論について解説した記事の中で詳しく紹介しているので、よろしければご覧ください!
https://www.takebooks.net/entry/the-theory-of-prospect
得る喜びよりも、失う苦痛の方が大きく感じるため、一度自分のものになったものは、高い価値を感じ、手放したくなくなってしまうのです。
保有効果は、自分が所有しているもの以外にも、恋愛やビジネスなどにも当てはまる事例があります。
現状維持バイアス
現状維持バイアスとは、「現状を大きく評価してしまい、現状を変えたくない」という状態です。
何かを手放すメリットよりも、現状を変えないことを大きく評価してしまいます。
そのため、必要のない物でも、なかなか手放すことが出来なくなってしまいます。
ザイオンス効果
ザイオンス効果とは、「何度も繰り返し接触することで、次第に親近感を持つようになる」傾向です。
なかなか捨てられない物の中には、以前にたくさん使っていて、思い入れがあるから捨てられないというものがあると思います。
何度も使っていくうちに、物に対して愛着が湧いてくるため、今は必要がないからといって、簡単には捨てられなくなってしまいます。
保有効果の例
日常
断捨離という言葉が一時期流行りましたが、必要のないけど捨てられいない物がたくさんあって、整理整頓できていないという悩みをお持ちの方は、まだまだ多いと思います。
必要ないと分かっていても、なかなか捨てることができないのも、保有効果が働いているからです。
特に思い入れなどがあると、捨てづらくなってしまいます。
私も、TOEIC対策で使った参考書で、今後使わないものがたくさんありますが、処分することができず、机の上に山積みになってしまっています(笑)
恋愛
どこかでは今の恋人と別れたいと思っているけど、なかなか別れを切り出せないという悩みや経験を持っている方はいらっしゃると思います。
これも保有効果が働いています。
保有効果が働くことで、恋人と別れると、これまで費やしてきた時間やお金が無駄になってしまうと考えてしまいます。
これまで費やしてきた時間やお金が無駄になってしまうのは、明らかに損失のため、人は強く嫌がります。
そのため、なかなか別れを切り出すことができず、関係を続けてしまうということが起きてしまいます。
マーケティングでの活用例
返品保証
全額返金保証をつけることで、消費者が購入をしたり、サービスを利用し始めるまでのハードルを下げることができます。
全額返金保証がついているから、ダメだったら返金すればいいやと思い購入したけど、返金はしなかった。
このような経験がある方、現在している方は多いと思います。
これらも保有効果が働いています。
返金すればいいやと考えていたしても、実際に自分のものになったり、使い続けているうちに、手放したくないという感情が生まれます。
全額返金保証がついていたとしても、実際に返金をすることは少なかったり、無料お試し期間が終わっても使い続ける人が多いため、ビジネスでは使われていることが多いのです。
無料お試し期間
無料お試し期間を設定することでも、保有効果を使うことができます。
最近では、動画配信サービスがかなり増えてきました。
多くのサービスでは、1週間~1か月間と、無料お試し期間を設定しています。
多くの利用者は、せっかく無料なんだから使ってみようと思って使い始めるはずです。
中には、無料期間だけと決めていたはずなのに、使っていくうちに、手放せなくなってしまい、有料になっても使い続けているという人もいると思います。
返品保証と同じように、まずは使ってもらうことができれば、有料になったとしても、保有効果が働いているおかげで、継続して使ってもらえる確率を上げることができます。
今回の内容は以上です!
今回は保有効果について紹介してきました。
保有効果とは、「一度自分のものになると、高い価値を感じて、手放したくなくなること」でした。
保有効果が働く理由は、①損失回避性②現状維持バイアス③ザイオンス効果の3つがありました。
保有効果に陥らないためには、自分が持っているものや人との関係、使っているサービスは、本当に自分が必要としているものなのか?保有効果が働いて、手放しくないだけなのではないか?とよく考えてみることが大切です。
この記事を作成するにあたって参考にした書籍を載せているので、保有効果や行動経済学について、もっと知りたい!という方は、ぜひチェックしてみて下さい!
・経済は感情で動く
・ファスト&スロー下
・行動経済学の使い方
・今日から使える行動経済学
上記以外の本にも、私が実際に読んだ行動経済学の本をまとめて紹介しています!
よろしければ、こちらも参考にして下さい!