今回は、鈴木祐さんの著の『天才性が見つかる才能の地図』を紹介していきます。
本書は、大人気サイエンスライターで著者の最新刊となります。
皆さんには、「自分には何の才能もない」と悩んでいる方もいらっしゃると思います。
また、自分には何の才能があるのか見つけようとしても、なかなか見つけることができないという方もいると思います。
本書は、そういった方にとても役立つ本です。
本書では、多くの人が陥っている才能に関する勘違いや、あなたの才能の見つけ方が解説されています。
そこでこの記事では、本書の中から好きや得意が才能にならない理由と、才能とは何なのかについて紹介していきます!
天才性が見つかる才能の地図の要約
好きや得意は才能にならない
才能というと、多くの人は好きなことや得意なことを思い浮かべると思います。
実際に、好きなことや得意なことを活かすことについて書かれた本を、私はいくつも読んできました。
しかし、本書では好きと得意で才能を探してはいけないと書かれています。
なぜ好きと得意で才能を探してはいけないのか?
まず、好きなことを追っても成功できない理由が3つあります。
①私たちの好きは時間とともに変わる
②たいていの人の好きが世の中から求められていない
③好きを追う人に対する評価が状況によって異なる
まずは私たちの好きは時間とともに変わるです。
心理学の調査では、人の好みは2~3年で変わってしまうと言われているそうです。
そのため、好きなことを追ってしまうと、情熱が少し下がったときに続けることができずに、目標を達成することができなくなってしまいます。
続いて、たいていの人の好きが世の中から求められていないです。
ケベック大学の調査によると、好きなことを持っていると答えた学生のうち、90%はスポーツ・音楽・アートに関することだったそうです。
しかし、スポーツ・音楽・アートを仕事にして生活していくことができるのは、本当にごく一握りの人だけであり狭き門です。
そのため、すべての人が好きなことを追っていては、ほとんどの人が職を失ってしまいます。
最後に3つ目は、好きを追う人に対する評価が状況によって異なるです。
好きなことをして周りから評価されるかは、あなたが誰に対して何をするかで変わります。
ハーバード・ビジネス・スクールの研究では、仕事が好きな会計士よりも仕事が好きなコンサルタントの方が評価されやすく、パフォーマンスも高かったそうです。
これは、コンサルタントは情熱的な姿勢が求められやすく、会計士は情熱よりも冷静さが求められるからだと考えることができます。
それ以外にも、斬新なアイデアをお客さんに売り込むときは、好きを前面にアピールした方が有効に働き、具体的な交渉を行うときは、好きをアピールすることは逆効果になってしまうという傾向もあります。
これまで紹介してきた通り、好きを追うことは必ずしも成功につながるわけではなく、むしろ失敗に陥ってしまうことも多いのです。
では、得意なことはどうでしょうか?
得意なことで才能を探してはいけない理由は2つあります。
①長所を伸ばすよりも欠点を直す方が効果が大きい
②得意を生かすことの効果が状況によって異なる
実際に行われたメタ分析からも、従業員の欠点を直すアプローチは、得意を生かすアプローチよりも効果が大きいことが分かっています。
極端な例ですが、どんなに良い企画を考える才能があったとしても、人とのコミュニケーションが苦手で、周りからの協力を得られなければ、意味がなくなってしまいます。
また、得意を生かすことの効果は状況によって異なります。
カルフォルニア大学の研究によれば、仕事の経験が浅い新入社員などは、自分の得意なことに集中した方がモチベーションが上がりやすいが、すでにモチベーションが高い人は、自分の欠点を意識した方がパフォーマンスが高まるそうです。
特にベテランの人は、自分のネガティブな面を前向きにとらえることが上手いため、欠点を意識した方がパフォーマンスが改善する傾向があります。
このように、その人のスキルや状況によって、得意なことが効果的に働くかどうかが変わっていきます。
これまで、多くの人が誤解している、好きと得意で才能を探してはいけない理由について紹介していきました。
本書では、他にも人生の成功を約束してくれる能力はないということや、人生は生まれや遺伝では決まらないといったことについても書かれています。
どれも、多くの人が才能について勘違いしていることなので、ぜひ本書を読んでみてください。
では、この記事では本当の才能とは何なのか?について紹介していきます。
才能とは何なのか?
本書では、才能のルールとして次の3つが書かれています。
①人生とは異能バトルである
②才能とは、グループ内の「かたより」が評価された状態である
③ルールがあいまいなほど、あなたは異能バトルに勝ちやすくなる
この記事では、特に重要なルール①と②について紹介していきます。
まず一つ目の、人生とは異能バトルであるというものが、才能を探す上で最も大切なルールとなります。
代表的な例として、本書ではスティーブ・ジョブズが例としてして挙げられています。
ジョブズは、ディスレクシアという問題を抱えていたせいで、読み書きが苦手でした。
11歳まで、シンプルな文章ですら理解することができなかったそうです。
しかし、ジョブズはディスレクシアを「生まれつき備わった特殊な能力」だと捉えて、異能として捉え直しました。
実際に、ディスレクシアを抱えている人は、複雑なものの全体像を瞬時に見抜いたり、ものごとを異なる視点から判断する能力が高く、新しいアイデアを思いつくのが得意な人が多いそうです。
そのため、ジョブズの優れたデザインセンスや、未来を見通す力は、ディスレクシアという異能によるものであると考えられます。
実際に異能を活かして大きな成功を収めた人たちは、歴史を振り返るとたくさんいます。
とはいえ、そういった人のエピソードばかり聞いていても、自分ごとして当てはめることは難しいですよね?
そこで2つ目のルールである、才能とは、グループ内の「かたより」が評価された状態であるについて考えてみましょう。
会社などの組織にいる以上、自分より優秀な人はいますし、たとえ今いなかったとしても、これから現れる可能性があります。
そのため、自分の得意なことばかりにこだわっていては、自分よりもできる人が出てきた時に、あなたの価値がなくなってしまいます。
そこで必要になるのが、自分がそのグループでどのようにかたよっているのかを考えることです。
例え、あなたの職場に何でもできる優秀な人がいたとしても、その人が全ての仕事を担当することは現実的ではありません。
そこで、あなたとその優秀な人の生産量を比較して、仕事を割り振る必要があります。
例えば、あなたが1日に営業のアポを2件取れるとします。
そして、1日資料作成に充てればページ作成できるとします。
一方で優秀なAさんは、1日に営業のアポが10件とれ、資料作成は24ページできるとします。
この場合、どちらもAさんの方があなたよりも優れていますが、Aさんが資料作成も営業のどちらもをこなすことはできません。
そこで適切に仕事を割り振るために、作業コストを見ていきます。
作業コストとは、その仕事をやることで、諦めるしかなかった別の仕事のことです。
あなたは、営業のアポを1件とる時間で、資料作成を8ページ行うことできます。
一方で、Bさんは営業のアポを1件とる時間で、資料作成を2ページ行うことできます。
このように考えると、あなたはAさんよりもアポ1件あたりの資料作成ページは多くなります。
また、あなたが1日に資料作成に専念したとしても、営業のアポの数は2件しか減りません。
そのため、あなたが資料作成に専念をして、その減った分をAさんに割り当てた方が、組織全体の成績は良くなります。
このような考え方を比較優位と言います。
本書では、比較優位とは個人の能力は他者とのパワーバランスによって決まるので、相対的にかたよったポイントを見つけて、そこに特化した方が活躍できるという考え方であると書かれています。
そして、かたよりには次の2点のポイントがあると本書では書かれています。
①どんな人でも、何らかの優位なかたよりを必ず持っている
②自分の苦手なことであろうが、優位なかたよりであれば役に立つ
自分には、何も才能や能力がないと思っていたとしても、周りと比較することで、優位なかたよりを見つけることができます。
そして、その優位なかたよりは必ずしも、あなたが好きであったり、得意だと思っていることとは限りません。
自分が苦手だと思っていることや、嫌いだと感じていることでも、周りのとの比較で、優れた能力になることはあります。
そのため、このかたよりこそが、あなたがグループ内で真に力を発揮できる能力になります。
ぜひ皆さんも、周りの人と比較して、優位なかたよりを見つけてみてください!
本書では、実際に優位なかたよりを見つけるためのワークが用意されています。
また多くの人が才能について勘違いしていることについても、詳しく解説されていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください!
ではでは。