今回は、藤野英人さん著の『「日経平均10万円時」時代が来る!』を紹介していきます。
日本はオワコンだ、日本経済は成長していない、
こういったネガティブなニュースが多いことから、日本の経済に悪いイメージを持たれているかもしれません。
またNISAなどで投資をする際にも、日本株に投資をするよりも、アメリカ株に投資をするという方も多くいらっしゃると思います。
しかし、今後日経平均は10万円を超える可能性があるのです!
なぜそう言い切れるのか?
1兆円を運用するプロの投資家である著者によって、本書ではその理由が詳しく解説されています。
この記事では、その本書の中から今海外投資家が日本株を買っている、日本の大企業は変わった、日経平均が10万円を超える理由の3つについて紹介していきます!
「日経平均10万円」時代が来る!
今海外投資家が日本株を買っている!
2023年には、世界一の投資家と言われている、ウォーレン・バフェット氏が来日して、日本の商社株群を買い増すと発表しました。
それをきっかけに、日本株は大型株や割安株を中心に大きく上昇しました。
もしかしたら中には、そんなのは一時のブームみたいなもので、どうせすぐ下がるよと思われる方もいるかもしれません。
日本では、失われた30年、少子高齢化などくらいニュースばかりで、日本経済に悪い印象しかないため、そのように考えてしまうのも当然だと思います。
しかし本書では、日本市場の上昇は、一時のブームではなく、日本企業の本質的な変化により起こるものであると書かれています。
本書では、日本企業が変化したきっかけは、著者が新・三本の矢となずけた、2014年2月に金融庁が発表したスチュワード・シップコード、2014年8月に経済産業省が発表した伊藤レポート、2015年5月に東京証券取引所が発表したコーポレートガバナンス・コードにあると書かれています。
この記事では、この3本の矢のうち、本書で多く紹介されていた伊藤レポートについて紹介していきます。
伊藤レポートとは、分かりやすくいうと、企業が将来的に成長を続けるための指針を具体的に示した報告書です。
この報告書の中で最も重要なのが、ROE(自己資本利益率)の目標水準を8%を宣言したことです。
ROEとは、株主が出資したお金を元手に、企業がどれだけの利益を上げたのかを数値化したもので、いわば企業がどれぐらい効率良くお金を稼いでいるかを表している数値です。
世界の投資家の間では、企業が資金を調達する際に発生するコストである資本コストは平均で7%であり、投下した資本から得られるリターンであるROEはそれを上回る8%があれば、多くの投資家は納得できると考えられています。
またROEが8%を超えると、ROEが高くなるとPBRも高くなるという相関関係が現れます。
PBRとは株式の時価が1株あたりの純資産の何倍にあたるのかを表しているもので、これが1倍だと株価と会社の資産価値が変わらないことになります。
このPBRが1倍を下回っていると、その会社の純資産に対して株価が安い、1倍を超えると純資産に対して株価が高いと考えることができます。
PBRは、ROEが8%を下回ると1倍を下回ってしまう可能性が高くなってしまいます。
そして日本では、PBR1倍割れの上場企業が多いことが、日本の株式市場の長年の課題となっていました。
皆さんも感じている通り、2014年に伊藤レポートが発表されてから、すぐに多くの上場企業がROE8%を達成するために動き出していたわけではありません。
ここまでの日本企業の体質改善は、非常にゆっくりと進んでいきました。
実際に、2014年に伊藤レポートが発表された後には、企業経営者の中には、具体的にどういったアクションをとればいいのか分からないという声も多くありました。
さらに、経営者がROE8%以上を達成しようと考えていたとしても、現場で働く従業員の日々の仕事と、どうやって結びつけていけばいいのかという課題もありました。
ですが中には、伊藤レポートを現場に落とし込もうとする企業も少しではありますが現れはじめ、経済産業省がその中でも良い取り組みだというものを集め、情報を広く共有していきました。
その結果、ROE逆ツリーといったフレームワークが広がり、お手本を元に自分たちの会社にも当てはめてみようとする企業が徐々に増え、少しずつ変化していったのです。
それに加えて、東証がPBR1倍割れの上場企業に対して改善策の開示・実行を要請したことにより、日本企業の改善が加速していき、昨今の株価上昇へとつながっていきました。
もちろん、現在でもROE8%以下、PBR1倍割れの企業は多くありますが、伊藤レポートを始め、スチュワード・シップコード、コーポレートガバナンス・コードの効果が徐々に現れ始めており、今後ますます日本企業の体質改善は進んでいくと考えることができます。
本書では、伊藤レポートが宣言したROE8%以外にも、日本企業の体質改善のきっかけとなったものが、多く紹介されています。
そのため、これまでの日本企業の変化をもっと詳しく知りたいという方は、ぜひ本書を読んでみて下さい。
日本の大企業は変わり始めている!
以前の日本の経営者は、海外の投資家から、スリーピング&ボーリング、眠くて退屈だと言われていました。
特に大企業のトップには、これから会社をもっと大きくするぞ、株価をあげるぞといった気持ちはなく、自分が勤めている間は会社が傾かなければいいという消極的な姿勢が多かったのです。
大企業のトップになることが人生のゴールとなってしまっており、トップになってからは消化試合のようになってしまっている経営者も多かったのです。
実際に著者が大企業のサラリーマン社長と話をしたときには、ゴルフ、健康、勲章の3つの話で盛り上がっていたそうです。
実は私の祖父は、ある企業のサラリーマン社長をしていたのですが、ゴルフばっかりやっていた話しか聞きませんでした(笑)
しかし時代は変わり、大企業のトップ交代が進んだことで、一気に社長が若返るというケースも増えてきています。
本書では、伊藤レポート後の時代を長く過ごしてきた現在のトップには、より洗練されたグローバルな視点を持ち、株式市場と対話できるタイプの経営者が登場してきていると書かれています。
そして、社長になることを人生のゴールとするのではなく、社長になってからのパフォーマンスで勝負をしようとする経営者が増えてきているのです。
著者がそういった変化に気が付くきっかけとなったのは、2022年末に住友商事の兵頭社長と食事をしたときだったそうです。
兵頭社長は食事中、1時間半も食事にはほとんど手を付けずに、会社の成長戦略を熱弁されていたそうです。
他にも、第一生命ホールディングス、味の素のトップとの会話でも、ゴルフ、健康、勲章の話で盛り上がるのではなく、これからの成長戦略や自社のすごみや、それを使って今後どのように社会を変えていくのかといった話が多く出てきたそうです。
実際に行われた著者と大企業とのトップの会話の変化からも、日本の大企業は変わり始めていると考えることができます。
そして、ウォーレン・バフェットが日本の商社株への投資を増やす決断をしたのには、日本の大企業のトップが変わり始めてきたことも、理由の一つなのではないかと本書では書かれています。
10年後に日経平均10万円を超える理由
本書のタイトルにもなっておりますが、藤野さんは本気で10年後には日経平均10万円を超えると考えています。
現在の日経平均は、3万5千円ほどなので、ここから約3倍上昇しなければ、日経平均10万を超えることができません。
そのため、日経平均10万円というと、そんな馬鹿な話があるかと思われるかもしれませんが、本書では日経平均が10万円を超える理由がちゃんと解説されています。
まず日経平均10万円を超えるためのポイントは、①インフレの進展②大企業の変化③次なる希望を示す新興企業の台頭です。
②大企業の変化は、先ほどの紹介した通り、良い方向へと変化が進んでいっています。
では、①インフレの進展と③新興企業の台頭はどうでしょうか?
日本では、長くデフレが続いていたため、今後もデフレが続くのではないか?という考えが強いかもしれません。
ですが本書では、日本のデフレからインフレへと徐々に転換しつつあると書かれています。
実際に日本政府は緩やかなインフレ経済への転換に向けて、企業側に給与の引き上げを求め始めています。
そして最近では、大企業を中心に基本給を何万円上げたなんていうニュースを見ることも多くなってきました。
とはいえ賃金が上がったとしても、物価がそれを上回ってしまっては、実質的な給与の価値は下がってしまい生活は苦しくなってしまいます。
残念ならが現状は、物価の上昇に対して、賃金の上昇が十分に起こっていない状態です。
それには、長期間のデフレを経験したことで、給与の引き上げのペースを上げることができない経営者も多くいることが原因にもなっています。
ですが昨今の深刻な人材不足によって、労働者の待遇が改善されていくことが考えられます。
労働不測の問題は長期的なトレンドになると予想されており、今後は競争力があって、自社のサービスや商品の値上げを実施でき、それによって従業員の待遇を改善できる企業だけが生き残ることができるようになります。
従業員の待遇をよくすることができない企業は、人が集まらなくなり、市場から徹底せざるおえなくなってしまうのです。
もちろん、給与の引き上げ以外にも本書で解説されている通り様々な要因があって、日本はインフレ経済へと進んでいます。
そして、株式市場は実際に市場で取り引きされている価格に基づく名目経済の動向を強く反映するため、インフレが進むことによって、日本の株式市場が上昇する可能性も高くなるのです。
そのため、現在3万5千円ほどである日経平均も、今後インフレが加速することで、さらに上昇すると考えることができます。
また以前とは違って、最近では企業意欲の高い若者も増え、政府がスタートアップ支援を掲げていることもあり、今後大きく成長を遂げるスタートアップ企業が増えてくると考えることができます。
そういった企業が増えることで、今後の日本経済の成長率をさらに押し上げることができ、10年後には日経平均10万円を突破する可能性があるのです。
本書では、日経平均が10万円を超える根拠について、まだまだ詳しく書かれていますので、興味のある方はぜひ本書を読んでみて下さい!
本書では、この記事では紹介しきれていない、今後の日本経済、株式市場について、またどういった企業に著者が注目をしているのか、企業名とその理由が詳しく書かれています。
そのため、日本株への投資に興味があるという方は、ぜひ本書を読んでみて下さい!
ではでは。