今回は、ジュリア・ガレフ氏著の『マッピング思考』を紹介していきます。
皆さんは、判断力が優れている人は、どんな人だと思いますか?
頭の回転が速い人でしょうか?思い切った判断ができる人でしょうか?
もちろん、これらの資質も大切です。
ですが、本書では、特に重要なのは「物事をまるで地図を描くように“俯瞰的に”とらえようとするマッピング思考」であると書かれています。
マッピング思考を身につけることができれば、他の人では見えてない視点を物事を見ることが出来るようになり、周りとは違った意見を出すことが出来るようになります。
そこでこの記事では、本書の中から、なぜマッピング思考が重要なのか?とマッピング思考を実践するための5つのトレーニングを紹介していきます!
マッピング思考の要約
なぜマッピング思考が大切なのか?
マッピング思考が大切な理由は、私たちには見たい情報だけを見ようとしてしまう傾向があるからです。
本書では、これを守りの思考と呼んでいます。
代表的な例を挙げると、日本ではよく血液型と性格が紐づけられることがよくあります。
皆さんも、実際にご存知かもしれませんが、科学的には血液型と性格は結びついていません。
ですが、B型の人はいいかげんだと聞くと、その行動にばかり注目がいってしまい、さも当たっているかのように感じてしまいます。
いいかげんなのは、B型の人だけではありませんし、B型の人にも几帳面な人はいます。
しかし、私たちは見たい情報だけを見てしまい、血液型と性格を結びつけてしまうのです。
実際に本書では、我々の思考について次のように書かれています。
私たちは、何かが事実であってほしいと願うときは”なんとかしてこれを信じられないだろうか?”と考え、それを受け入れる口実を探そうとする。
逆に、何かが事実であってほしくないと願っているときは”どうしてもこれを信じなくてはならないのだろうか?と考え、それを拒絶する言い訳を探そうとする
先ほどの血液型は、この文章の前者の例でした。
我々には、後者に書かれているように、信じたくない情報に対しても、それを裏付ける情報にばかり目を向けてしまうことがあります。
その結果、フェイクニュースや陰謀論を信じてしまうようになってしまいます。
そして、それらの情報をもとに自分は正しいと思いこんでしまい、反対の意見がでた時や、自分の意見が否定されたときは、それを一切受け入れられなくなってしまうのです。
それでは、本当に正しい判断をすることができません。
血液型と性格のように、身近な問題であれば、それでも問題はないかもしれません。
しかし、会社の経営方針を決めるなど、何か重要なことを決定するときに、守りの思考をしてしまうのは危険です。
会社やチームを間違って方向へと導いてしまいます。
そのため、物事をこうあってほしいという、一点の視点ではなく、まるで地図を描くように”俯瞰的に”とらえようとする、マッピング思考が大切なのです!
マッピング思考では、自分の理解に限界があると自覚して、間違っている可能性のある部分に注目していきます。
そこで、マッピング思考では、これは本当か?と自問して自分の考えを決めていくのです。
もし間違っているところがあれば、それを修正して、徐々に正しい地図を完成させていきます。
自分の考えを否定する情報は、排除するべきものではなく、地図を正しく修正出来るチャンスになるのです。
また、マッピング思考では、仮定を疑い、「もっとも起こりやすい失敗は何か?」と自問することで、あらかじめその失敗の可能性に備えていきます。
そのため、マッピング思考を使うことによって、自分の思い込みに惑わされずに、最適解を見つけることができます。
では、マッピング思考を行うために、具体的にどのように考えればいいのか?
続いては、マッピング思考を行う上で重要な5つの思考トレーニングを紹介していきます!
マッピング思考がやりやすくなる5つのトレーニング
その5つのトレーニングとは、下記の通りです。
①ダブルスタンダード・テスト
②部外者テスト
③同調テスト
④選択的会議主義テスト
⑤現状維持バイアステスト
それぞれの思考トレーニングについて解説していきます。
1つ目がダブルスタンダード・テストです。
ダブルスタンダード・テストでは、自分に当てはめていない基準で人の行動を判断していないか?を考えていきます。
例えば、あなたが応援しているチームのライバルチームの選手が、あなたのチームを批判したとします。
おそらく、あなたはその選手に腹を立てるでしょうか。
ですが、もし自分の応援しているチームの選手がライバルチームを批判したら、どう感じるでしょうか?
その選手に腹を立てることはなく、むしろその選手を擁護すると思います。
ですが、自分の応援しているチームの選手であろうと、ライバルチームの選手であろうと、やってはいけないことに変わりはありません。
このように、ダブルスタンダード・テストで考えることによって、自分が自分の好みや基準によって判断してしまっていることに気づくことができます。
続いて、2つ目が部外者テストです。
部外者テストでは、赤の他人なら、この状況をどう考えるだろうか?と考えていきます。
自分の視点で考えてしまうと、数多くある選択肢を狭めてしまったり、各選択肢を平等に検討することができなくなってしまいます。
そのため、赤の他人の視点で考えてみることが大切なのです。
例えば、あなたの今の仕事に情熱が持てず、辞めようか悩んでいるとします。
もし自分に視点で考えてしまうと、待遇が良いから家から近いからなど、本当は辞めたくても、辞めない理由ばかり探して、自分を納得させてしまうかもしれません。
そこで、もし赤の他人が自分と同じ境遇であると仮定して、その人物やどのように選択をするかを考えてみることが大切です。
その結果、別分野に行くよりも、今の会社で別部署に異動をしたり、マネージャー職に挑戦するために仕事を続けようと決断をすることができたり、情熱ので持てる仕事を求めて他の会社に転職することを選択するかもしれません。
いずれにせよ、赤の他人の視点で考えることによって、選択肢を狭めることを防ぎ、それぞれの選択肢を平等に判断することが出来るようになります。
3つ目が同調テストです。
同調テストは、その意見は、どれくらい自分の頭で考えたものなのかを確かめるときに使います。
そこで、もし相手が意見を変えても、自分は同じ意見を持ち続けるだろうか?と考えます。
例えば、会議で同僚が残業時間を減らすために人を増やすべきだと提案して、あなたも「その通りだ」と賛成したとします。
その時に、もし同僚がいきなり意見を変えても、自分は恩地意見を持ち続けるだろうか?と考えることによって、自分がその意見を真剣に考えているのかを確認することができます。
4つ目が選択的懐疑主義テストです。
選択的懐疑主義テストでは、今持っている証拠が反対意見を支持しているとしたら、私はそれをどの程度信用できると判断するだろうか?という視点で考えていきます。
もし、あなたの考えとは反対の考えを支持する意見を見つけた場合、「そんなはずはない」とその意見のあら捜しをするとします。
そして、あらが出てくれば、「やっぱり自分の意見は正しかったのだ」と納得すると思います。
ですがそこで、もしその意見があなたの考えを支持するものであったら、どうするのか?を考えてみましょう。
おそらく、特にあら捜しをすることもなく、「自分の意見は正しかった、これは自分の考えの正当性を高めるために、有力な意見だから使おう」と考えてしまうのではないでしょうか?
これでは、もしその意見がデマだったとしたら、あなたは間違った情報を信じてしまうことになります。
だからこそ、選択的懐疑主義テストを行って、自分の考えを支持する情報であったとしても、反対の意見を支持する情報と同じように、調べてみることが大切なのです。
5つ目が、現状維持バイアステストです。
現状維持バイアステストでは、もし現在の状況が今と違っていたら、積極的にそれを取り戻そうとするだろうか?という視点で考えていきます。
私たちには、今を高く評価してしまい現状を変えることができないという現状維持バイアスがあります。
そのため、いったん今が別の状況であると仮定して、それでも今の状況を取り戻したいと思えるかを考えることが大切です。
それを考えることによって、別の選択肢を選ぶことためらっているのは、今の選択肢にメリットがあると感じているからなのか、それとも現状維持バイアスが原因なのかを考えることができます。
以上、これまで紹介してきた5つの思考トレーニングによって、私たちはマッピング思考を実践することができます。
もし、守りの思考に陥ってしまっていそうだと感じたら、今回紹介した5つのトレーニングを実践してみて下さい!
本書では、この記事では紹介しきれなった、マッピング思考の解説について、まだまだ書かれています。
これまで、自分の思い込みによって失敗してきた経験があるという方や、俯瞰的に考える力を身につけたいと考えている方は、ぜひ本書を読んでみて下さい!
ではでは。